ハミガキ剤、きちんと選べていますか? セルフケアのための“剤テク”講座
2024/01/28
このコラムは当院で執筆したnico2018年10月号の内容をもとにまとめたものです。
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むし歯予防の主役,フッ素がいま話題に!
「むし歯予防といえばフッ素」というくらい多くの歯みがき剤にフッ素が配合されてきました.
ところが,このフッ素,実は日本ではつい最近になって世界標準になったのです.
よく耳にするフッ素,一体何者?
フッ素は,もともととても反応性がいい元素なので,フッ素だけで存在することはなく,必ず他のものと一緒になって化合物として存在しています.そのため,正確には「フッ化物」という呼び方をしていて,そのように記載されている製品もあります.実際にフッ素は自然界の様々なもの含まれていて,緑茶,野菜,肉,水産物などの食品にも含まれています.もちろん私たちの体の中にも歯や骨に含まれています.
さて,そのフッ素には3つの働きがあります.それは,①歯から溶け出したカルシウムなどのミネラルを歯に戻す作用をスピードアップする ②歯の結晶の中に取り込まれてむし歯になりにくい硬くて丈夫な歯を作る ③抗菌作用によってむし歯菌が増えるのを抑える
フッ素は,これら3つの作用によってむし歯を予防する成分として国内シェアの9割以上の歯みがき剤に配合されていています.なので多くの人が日頃からフッ素によってむし歯予防していることになりますね.
フッ素にはどんな種類があるの?
フッ素は,前号でお話しした薬用成分の代表選手です.具体的な成分としては,フッ化物である「フッ化ナトリウム」と「モノフルオロリン酸ナトリウム」がほとんどで,これらが入っていれば薬用であり,医薬部外品ということになります.
フッ化ナトリウムはフッ素のイオンになりやすく、歯の最も表面ですばやく反応すると言われています.一方,モノフルオロリン酸ナトリウムは,唾液と反応してフッ素を出しながらゆっくりと歯の表面から深いところまで届きやすいと言われています.どちらも同じくらいの予防効果なので,実際には製品によって歯みがき剤の他の成分,たとえば清掃剤などと相性のよい方が配合されることも多いのです.
フッ素は1500ppm時代に突入!
これまで日本ではフッ素の濃度は1000ppmを上限とされていましたが,2017年3月に厚生労働省により,国際基準(ISO)と同じ1500ppmを上限として配合することが認められました.歯科医院扱いの製品のほか,ドラッグストアやスーパーでも少しずつ一般市販品が増えてきたので,目に止まった方も多いことでしょう.実際の製品では,1500を超えないように1450ppmとして販売されています.フッ素濃度が高くなるほどむし歯の発生が減ることが従来から各国の研究で示されていますし,最新の研究成果からも確かめられています.高濃度フッ素配合と表記されていることも多いのですが,あくまで従来品に比べて高濃度という意味です.歯科医院で受ける高濃度フッ素塗布は9000ppmですから,これに比べれば1450ppmといえども低濃度であることには違いありません.
ただし,国内ではより安全のため,エナメル質が作られている時期の6歳未満には使用を控えるように必ず記載されていますので注意しましょう.逆に濃度が上がったことで大人のむし歯を意識した製品も登場しています.大人のむし歯は,エナメル質よりも溶けやすい象牙質,すなわち歯ぐきの下がって露出した根の部分に出来たり,被せ物の境目から進行したりするので,お口のなかにより多くのフッ素がキープできる1450ppmの製品の方が予防効果が高いのです.このような方は新しくなった規格に注目してみましょう.
まとめ
歯みがき剤をうまく選ぶには,まずはお口のなかの状況を理解することが大切.
もしご自分のお口の状況がよくわからないかたは今日の受診で教えてもらいましょう.
歯みがき剤選びに迷われたら,歯科医院で歯ブラシと一緒に歯みがき剤を “処方”してもらいましょう.
次回は歯の結晶に効く成分にスポットを当ててみましょう.
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